前歯虫歯の治療方法ご紹介
前歯の虫歯に対する治療法は、虫歯の大きさや歯の状態によって異なりますが、よく選択される前歯の一般的な方法をいくつかご紹介します。
前歯の詰め物CR(コンポジットレジン)
虫歯が小さく、歯の神経(歯髄)に達していない場合、虫歯で失った歯を回復するために詰め物をします。できるだけ目立たないように、前歯には歯の色調に合わせて樹脂の詰め物であるCR(コンポジット・レジン)がよく使われます。しかし、時間が経つと変色や詰め物の端が着色したり、隙間から2次虫歯になることもあります。こちらは保険治療が可能です。
前歯ダイレクトボンディング
ダイレクトボンディングとは、保険治療でCR(コンポジット・レジン)を詰める方法とは違い、最小限の削る量で虫歯を取り、特殊な樹脂や様々な器具を用いて直接前歯と詰め物を接着させる方法です。保険では使用できないラバーダム防湿やマイクロスコープなど現時点で推奨されているあらゆる機材を使用して最善の環境で特殊な樹脂を詰めます。
通院回数・治療期間
1回(約1週間)
*神経に近い大きな虫歯の場合は、歯髄温存治療を先に行うことがあります
費用
33,000〜66,000円(税込)*治療費は詰め物の大きさ、隣接面を含むか含まないかで異なります
治療のリスク・副作用等
・術後の知覚過敏、咬合痛
・樹脂の欠け、チッピング(歯の縁が欠けること)
・歯髄の失活(歯の神経が死んでしまうこと)
前歯のラミネートベニア
虫歯が唇側(前面の見える部分)に多くあり、歯を大きく失っていない場合は、ラミネートベニアが適しています。ラミネートベニアは、セラミックの薄いシェルで、歯の削る量を最小限に抑えた侵襲の少ない治療法です。歯の表面にあるエナメル質に接着し、元の前歯の色を透かすので審美的で天然歯のように見えます。またエナメル質とセラミックの硬さが近似しているので、歯と強固に接着させることにより歯の強度も上がります。
この症例では右上1番(黄色の丸)はクラウン、左上1番(緑色の丸)はラミネートベニアで修復しています。このように最小限の侵襲で天然歯のような審美性を得ることができます。
通院回数・治療期間
2〜3回(約1ヶ月)
*本数が多い場合、虫歯治療が必要な場合は、治療回数と治療期間が異なります。
費用
ラミネートべニア 165,000円(税込)*クラウンの費用は別途165,000円
*治療費は別途(保険治療、仮歯代、材料費で約15,000円程度)
治療のリスク・副作用等
・術後の知覚過敏、歯の痛み
・セラミックの破折、脱離
・歯髄の失活(歯の神経が死んでしまうこと)
前歯のウォーキングブリーチ
ウォーキングブリーチとは、根管治療を受けた神経のない前歯の色を明るくするために行う漂白処置のことです。前歯の内部にホワイトニング材を入れたまま患者さんに過ごしてもらうことからウォーキングブリーチという名前がつきました。虫歯で前歯の神経が痛んでしまい、根管治療を受けた前歯は、時間の経過ともに灰色や茶色に変色していきます。ウォーキングブリーチは、歯の内部からホワイトニングすることにより、前歯の自然な色を取り戻します。
通院回数・治療期間
3~4回、期間:3週間
*根管治療が必要な場合は、治療回数と治療期間が別途かかります。
費用
55,000円(税込)
治療のリスク・副作用等
・術後に外部吸収が起こる可能性がある
前歯のクラウン(被せ物)
虫歯で前歯の歯質の大部分が失われた場合、歯の強度と外観を回復するためにクラウン(被せ物)が必要になります。前歯のクラウンは歯全体を覆うため歯の色調を合わせやすい特徴があります。
特に失活歯(神経のない歯)は残っている歯質が少ないと歯根破折のリスクが高まり、色調も悪くなってしまいます。この症例は、虫歯治療と根管治療後にウォーキングブリーチ(歯の内部からホワイトニングする方法)を行なって、前歯の状態と色調を改善してからセラミッククラウンを被せました。
通院回数・治療期間
2〜3回(約1ヶ月)
*根管治療が必要な場合は、治療回数と治療期間が別途かかります。
費用
165,000円(税込)
*治療費は別途(保険治療、仮歯代、材料費で約15,000円程度)
治療のリスク・副作用等
・術後の知覚過敏、咬合痛
・セラミックの破折、脱離
・歯髄の失活(歯の神経が死んでしまうこと)
前歯のブリッジ
前歯が虫歯や歯根破折で抜歯となった場合、審美性と機能を回復するためにはブリッジ(橋渡しの被せ物)の選択肢があります。前歯の両隣在歯がすでに被せ物になっている場合には第一選択となることが多いです。
通院回数・治療期間
2〜3回(約1ヶ月)*抜歯窩の治癒期間は含まれていません
費用
429,000円(税込)
*抜歯など治療費は別途(保険治療、仮歯代、材料費で約30,000円程度)
治療のリスク・副作用等
・術後の歯根破折、根尖病変の再発
・セラミックの破折、脱離
・術後の知覚過敏や歯髄の失活(歯の神経が死んでしまうこと)*生活歯の場合
前歯の小矯正と歯周外科処置
歯肉縁下(歯肉の下)まで虫歯が進行している場合は、抜歯の診断となることが多くあります。矯正治療により埋まっている前歯を挺出させてからしっかりと虫歯を除去して、前歯と一緒に上がってきた歯肉を下げる歯周外科処置を行うことで歯を温存できることもあります。
一般的に3〜6ヶ月、歯肉の形態が落ち着くのを待ってからクラウン(被せ物)をして審美的な前歯を作ります。
通院回数・治療期間
10〜12回(約6ヶ月)*矯正期間約1ヶ月、歯周外科処置後3ヶ月以上待ってから被せ物を入れます
費用
16,500円(小矯正装置費用)+1,650円×ゴム交換回数(税込)
*治療費は別途(保険治療、仮歯代、材料費で約15,000円程度)
*歯周外科の費用は別途55,000円(税込)
治療のリスク・副作用等
・歯根が短くなるため、動揺、審美障害が出る可能性あり
・失活歯で行うことが多いため、将来的に歯根破折する可能性あり
前歯のインプラント
失ってしまった前歯の両隣在歯が健全な歯の場合は、インプラントをお勧めすることがあります。隣の前歯を削らなくて良いことが最大のメリットです。骨が足りない場合は骨造成、歯肉が薄い場合は結合組織移植(歯肉の移植)を行うこともあります。骨にチタン性のインプラントを埋めて土台(アバットメント)の上にセラミッククラウンを被せるセメントリテインと土台(アバットメント)とセラミッククラウンが一体化されているスクリューリテインのタイプがあります。インプラント周囲炎のリスクがあるため、歯周病治療を行なってからインプラント治療を行い、定期的なメインテナンスが必要です。
こちらの患者様は歯根破折で歯を失われ、両隣在歯が健康な歯であったため、前歯にインプラント治療を選択されました。歯軋りをされるため、ナイトガード(夜間に入れるマウスピース)を使用してもらい、長期的に安定しております。
通院回数・治療期間
7〜8回(約1年)*抜歯即時埋入(抜歯と同時にインプラントを埋入する方法)だと4〜6ヶ月
費用
450,000円〜600,000(税込)*骨造成(骨が足りない場合には増骨手術を行います)の有無で費用が異なります
*治療費は別途(保険治療、仮歯代、材料費で約15,000円程度)
治療のリスク・副作用等
・被せ物、仮歯の脱離、欠け、緩み
・手術後の腫れ、痛み
・インプラント周囲炎(インプラントを支えている骨が溶けてしまう病気)のリスク
・フィクスチャー(インプラントのネジの部分)、スクリューの破折
・将来的に被せ物を修理、または被せ直しが必要になる可能性あり
前歯の義歯
通院回数・治療期間
7〜8回(約10ヶ月)
費用
400,000〜900,000円(税込)*残っている歯の本数によって費用が異なります。
*治療費は別途(保険治療、仮義歯代、材料費で約30,000円程度)
治療のリスク・副作用等
・人工歯の擦り減り、脱離のリスク(金属のフレームが問題なければ人工歯のみを取り替えられます)
前歯の接着ブリッジ
失った歯の両隣在歯が健康な場合には、インプラント治療を勧められることが一般的ですが、歯を削らずにセラミックを貼り付ける接着ブリッジといる選択肢もあります。最大のメリットは歯をほとんど削らないで治療ができるので、両隣在歯のダメージが最小限に抑えらることです。現在では、セラミックの接着技術や材料の進歩により、このような治療も可能になりました。セラミックを貼り付けるスペースがあるかの診断が重要ですので、歯科技工士と相談して治療可能か決定します。
この患者様は30代女性で歯根の外部吸収(歯の根が外側から溶けてしまう病気)で歯を失ってしまいましたが、接着ブリッジで歯をほとんど削らずに審美的な結果が得られました。現在のところ、脱離などのトラブルは一度もなく審美的な状態を保っています。定期的なメインテナンスと噛み合わせのチェックが必要です。
通院回数・治療期間
3〜4回(約1ヶ月)
費用
264,000円(税込)
*治療費は別途(保険治療、仮歯代、材料費で約20,000円程度)
治療のリスク・副作用等
・ブリッジ、仮歯の脱離、破折の可能性あり
前歯の根管治療
根管治療術前
根管治療術後
虫歯が歯髄(歯の神経)に達し、炎症や感染を引き起こしている場合には、根管治療が必要になります。この処置では、感染した歯髄(歯の神経)を取り除き、生体適合性のある材料で充填した後に被せ物や詰め物で失った歯を修復します。見た目はもちろんですが、歯を長持ちさせるためには見えない部分の治療が重要です。
通院回数・治療期間
2〜3回(約1ヶ月)
費用
88,000円(税込)*小臼歯、大臼歯は根管の数が多いため、費用が異なります。
*処置料は別途1,650円
治療のリスク・副作用等
・治療後に痛みや腫れが出る可能性あり
・予後不良であれば歯根端切除術(歯の根の先をカットする外科治療)が必要な場合があります。
・将来的に歯根破折の可能性あり
前歯の抜歯
虫歯が大きく進行しすぎて歯を保存できない場合や歯根破折(歯の根が割れること)が認められる場合、抜歯の診断となることもあります。抜歯後は、インプラント、ブリッジ、部分入れ歯で補うことができます。
最も適切な治療法を決定するためには、担当の歯科医師とよく相談することが大切です。また定期的な歯科検診とメインテナンスが歯を長持ちさせるためには不可欠です。
通院回数・治療期間
1回(消毒や抜糸のため、約1週間後に来院して頂きます)
費用
2,000〜3,000円(通常は保険治療)*抜歯窩温存術(骨を温存する治療法)、コラーゲン材料の使用は別途
*消毒、抜糸の費用は別途(保険治療で約1,000円程度)
治療のリスク・副作用等
・術後に痛み、腫れが出る可能性あり
・術後にドライソケット(血餅がなくなり抜歯窩の骨が剥き出しになり、治癒が遅れる状態)になる可能性あり
・感染物質、歯根の残存、術後感染により再度掻爬の可能性あり
・骨吸収により顎骨に凹みができる可能性あり