奥歯の虫歯治療

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冷たいものや熱いものを飲食した際に奥歯がしみたり、食べ物を噛んだ時に奥歯に痛みを感じたことはないでしょうか?

虫歯の好発部位はご自身では気付きにくい隣接面(歯と歯の間)や歯の溝です。特に奥歯はご自身では見えにくいので、発見が遅れてしまうことが多々あります。

食事の時に奥歯がしみたり、痛んだりすると気になりますよね?そんな時はすぐに歯科医院を受診して下さい!

目次

なぜ虫歯になるのか

一般的に虫歯はエナメル質という外側の白い部分よりも象牙質と呼ばれるやわらかい組織で急速に進みます。歯が外側から溶けるのではなく、虫歯菌がマイクロクラック(エナメル質に入った亀裂やヒビ)を通って象牙質へ侵入・感染することで大きく進んでしまうのです。

欧米では、定期的なメインテナンスが定着していますが、日本では痛くなったら歯科医院に行くというのがまだまだ一般的です。奥歯が痛んでから歯科医院を受診すると抜髄(歯の神経を抜く治療)や、抜歯になってしまうことがほとんどです。少しでも不調や違和感を感じたら早めに歯科医院の受診をお勧めします!

また、日本では2次虫歯(治療した歯がまた虫歯になってしまうこと)が非常に多いと言われています。そこで当院では、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使用した精密な奥歯の虫歯治療を提供しています。

当院で治療されているA様は奥歯で噛むと痛いと悩まれて来院されました。

ここで実際の奥歯の虫歯処置をみてみましょう!

奥歯の虫歯治療A様の症例

奥歯の被せ物の除去

奥歯に入っていた金属の詰め物を外していきます。できるだけ健康な歯質を削らないように拡大視野で金属だけを削っていきます。

被せ物を除去した奥歯の状態を確認

奥歯の金属を外した状態です。以前に治療した金属の詰め物の下が虫歯になっていました。(二次虫歯)

奥歯の虫歯が神経近い深い部分まで進行しています。(黒い部分が全て虫歯ではありません)以前治療した歯が虫歯(二次虫歯)になると外からわかりにくいこと、詰め物の下で虫歯が進行するため、深くまで進行していることが多いです。

奥歯の虫歯除去

歯の神経から遠い部分の虫歯から除去していきます。先に神経の近くの虫歯を除去して露髄(神経の一部が見えてくること)すると唾液の中の細菌が感染してしまうからです。虫歯を除去する際は、エナメル質をできるだけ温存することで歯の破折のリスクを軽減させます。

神経の近くはマイクロエキスカ(金属の耳かきのような器具)で慎重に虫歯を除去していきます。神経が見えてきそうな時は先にラバーダム防湿(唾液が入ってこないように歯にバネをかけてゴムのマスクをかけて患歯を口の中と隔離する処置)を行います。

検知液で虫歯を染め出す

う蝕検知液(虫歯を染め出す染色液)で染め出します。虫歯が残っていた場合は、マイクロエキスカ(金属の耳かきのような器具)で慎重に除去していきます。

ラバーダム防湿

充填前には湿度をコントロールするため、奥歯にラバーダム防湿(唾液が入ってこないように歯にバネをかけてゴムのマスクをかけて患歯を口の中と隔離する処置)を行います。神経の近くを処置する場合は特に無菌的な環境作りが大切です。 ⇒ラバーダム防湿の詳細はコチラ

CR(コンポジットレジン)充填

プライミング(表面処理)とボンディング(接着剤塗布)を行い、コンポジットレジン(樹脂の詰め物)を隙間なく充填していきます。

天然歯の形態を模倣してコンポジットレジン(樹脂の詰め物)を積み上げていきます。奥歯にできるだけ凹凸があった方が食べ物をしっかりと掴むことができ、食事がしやすいです。

奥歯の咬み合わせ調整・研磨

形態修正と咬合調整(咬み合わせの調整)を行った後、最終研磨を行います。表面を滑沢に仕上げることにより、プラーク(歯垢)の沈着を防ぎ、清掃性が向上します。

奥歯の治療終了

奥歯の虫歯治療終了です。

今回は歯と歯の間を含まない治療のため、被せ物ではなくダイレクトボンディング(削ったところに直接セラミックを多く含むコンポジットレジンを埋める処置)を行いました。

奥歯のダイレクトボンディングの費用・リスク等

ダイレクトボンディング

治療期間:ダイレクトボンディングは基本的に1回で施術が終わります。後日、噛み合わせの確認、最終研磨で来院していただくことがあります。

費用:1歯30,000円+税(単純窩洞:歯と歯の間のコンタクトを含まず、咬む面だけの虫歯)

※複雑窩洞のダイレクトボンディングは1歯50,000円+税となります。

治療のリスク・副作用等:治療後の咬むと痛みがあることがあります(重合収縮による痛みなので、数日で改善されることがほとんどです)。咬み合わせが強い方は経年的にセラミックの樹脂がすり減ってきます。色調も経年的にくすんでいく可能性があります。

奥歯の保険治療Brの2次虫歯N様の症例

続いて当院で奥歯の虫歯治療後、補綴(被せ物)を入れた50代女性N様の症例です。

打診(−)自発痛(−)冷水痛(+)咬むと違和感がある状態です。

数年前に他院の保険治療で入れた不適合な(フィットの良くない)奥歯のメタルブリッジの下が二次虫歯になっていました。

レントゲンでは大きな金属が入っているため、中がどうなっているのかわかりませんでした(レントゲンでは、金属が白く見え、虫歯は黒く透けて見えます)。奥歯のブリッジを外すと中が大きな虫歯になっており、神経ギリギリまで虫歯が進行していました。神経スレスレの部分を殺菌作用と鎮静効果のあるMTAセメントで覆い、その上を光重合型コンポジットレジン(光で固まる樹脂の材料)で充填し、仮歯を入れました。

後日、痛みがないのを確認して、治療を進めていきました。欠損部にインプラントの選択もありましたが、すでに歯を削ってブリッジが入っていたため、メリット・デメリットと将来のリスクを説明し、相談の上、適合の良いジルコニアブリッジを装着した症例です。

奥歯の虫歯治療前

奥歯に保険のメタルブリッジが装着されています。金属と歯の接合部に隙間があるので治療することになりました。

奥歯の被せ物を除去

イージークラウンリムーバーという被せ物や歯を削る量を最小限にできる器具を使用してメタルブリッジを除去します。被せ物を除去する際もできるだけ健康な歯質は削らないように心がけています。

クリーニング

超音波スケーラー(微細な振動により歯石などを除去する機械)で奥歯についた汚れやプラーク(歯垢)を取り除いていきます。

検知液で奥歯の虫歯を染め出す

齲蝕検知液(虫歯を染め出す染色液)で奥歯の虫歯を染め出します。緑色に染まった部分が虫歯です。想像以上に虫歯が進行していました。

隔壁の形成

歯の神経から遠い部分の虫歯から除去し、唾液や細菌が入らないように隔壁(樹脂で作る壁)を立てます。先に神経の近くの虫歯を除去して露髄(神経の一部が見えてくること)すると唾液の中の細菌が神経に感染してしまうからです。

ラバーダム防湿

ラバーダム防湿(唾液が入ってこないように歯にバネをかけてゴムのマスクをかけて患歯を口の中と隔離する処置)を行い、神経に近い部分の虫歯を取っていきます。この際は削りすぎて歯の神経が見えてこないようにマイクロエキスカ(虫歯を除去する器具)を使用して慎重に虫歯を除去していきます。

虫歯の除去

虫歯菌の酸により溶けた軟化象牙質には水分が含まれます。虫歯を取り切り、エアー(風)をかけると乾燥した歯質が確認できます。

MTAセメントで間接覆髄

神経の近くを殺菌作用と鎮静作用をもつMTAセメントで覆っていきます。以前は、大きな虫歯では神経を抜く処置(抜髄)が必要と考えられていましたが、現在は神経が見えてこなければ神経を温存できることが多いです。MTAセメントは、体に対して生体親和性が高く、強アルカリ性のため強い殺菌作用があり、水分があっても硬化する性質を持っています。

グラスアイオノマーセメントで覆う

MTAセメントは硬化までに時間がかかるため、まずは光重合型グラスアイオノマーセメント(プライマーなしで使用できるセメント)で覆います。

CR(コンポジットレジン)充填

残った隙間を光重合型コンポジットレジン(光照射で硬化する樹脂の詰め物)を充填します。

奥歯に仮歯の作成、装着

奥歯の形を整えてから即時重合レジン(粉と液を混ぜ合わせて硬化する樹脂)で作ったブリッジの仮歯を装着して1日目の治療が終了です。

ジルコニアCr装着

仮歯を使用してもらい痛みがなかったため、マイクロスコープ下で再度、奥歯の形を整えてから型取りを行い、ジルコニアブリッジを装着しました。現時点ではブリッジの素材は審美性と強度の面からジルコニアが最善だと考えています。(2022年11月時点)

奥歯の虫歯治療(ジルコニアBr)の費用やリスク等

来院回数:3回(虫歯治療1回、精密形成と型取り1回、ジルコニアブリッジ装着1回)

費用:ジルコニアブリッジ 390,000円+税

治療のリスク・副作用等:歯の神経を残して治療をしているため、治療後に冷たいものがしみたり、歯ブラシをすると痛みがあることがあります。(一時的な症状で、数日で改善することがほとんどです)

奥歯の虫歯治療後セラミックを入れた30代女性M様の症例

打診(−)自発痛(−)冷水痛(−)

数年前に奥歯に入れた保険のメタルインレーをセラミックで綺麗にしたいということで来院された患者様です。

症状はありませんでしたが、奥歯の金属を外すと二次虫歯(一度治療した歯がまた虫歯になること)になっていました。

奥歯の虫歯をマイクロスコープ下で丁寧に除去してコンポジットレジン(樹脂の材料)で充填した後、形を整え型取りしました。

後日、痛みがないのを確認してからラバーダム防湿を行い、口の中の湿度をコントロールした状態で適合(フィット)を確認、エナメル質をエッチング(酸処理)、プライミング(表面処理)、ボンディング(接着剤)を塗布、レジンセメントで装着しました。

セラミック治療は審美性だけでなく、プラーク(歯垢)がつきにくく、歯のマイクロクラック(微小な亀裂)が入りにくいので将来の虫歯や歯根破折を予防します。

奥歯の金属の被せ物を外す

保険のメタルインレー(金属の詰め物)が装着されています。できるだけ健康な歯を削らないように金属だけを削って被せ物を外していきます。

奥歯の虫歯を染め出す

金属を除去して齲蝕検知液(虫歯を染め出す染色液)で虫歯になっていないか確認します。緑色に染まった部分が虫歯です。想像以上に虫歯が進行していました。赤い齲蝕検知液もありますが、当院では緑色の齲蝕検知液を使用しています。

奥歯の虫歯除去

深い部分で虫歯が進行していたので、まずは歯の神経から遠い部分を5倍速コントラ(回転数を調整している切削機器)にダイヤモンドバーを装着して除去していきます。

神経近くの虫歯の除去

神経から遠い部分の虫歯から除去し、神経に近い部分はマイクロエキスカ(手用の切削器具)を使用して慎重に虫歯を除去していきます。

齲蝕検知液で染まらなくなり、マイクロエキスカ(手用の切削器具)で削れなくなるところまで慎重に虫歯を除去します。(虫歯菌が作り出す酸により溶けた虫歯には水分が含まれます。虫歯を取り切り、エアー(風)をかけると乾燥した歯質が確認できます

CR(コンポジットレジン)充填

虫歯が深かった部分はコンポジットレジン(樹脂の材料)で充填します。象牙質(歯の内側の部分)とコンポジットレジン(樹脂の材料)は硬さが近似しています。できるだけ天然歯に近い構造を再現することを目指しています。

歯の形を整える

虫歯の深い部分の処置が終わったら、マイクロスコープ下で歯の形を整えていきます。歯とセラミックの接合部(マージン)の適合(フィット)が重要です。削った端の部分が凸凹だとセラミックの端も凸凹に作らないといけないので適合(フィット)が悪くなり、再度虫歯になりやすくなります。

被せ物の型取り

シリコン印象材(精密に型取りできる材料)で歯の型を採り、噛み合わせと対合歯を型取りしたら仮蓋をして1日目の治療が終了です。

染め出し

約10日後、痛みがなかったため、再度麻酔を行い、被せ物をSETするためのクリーニングをします。仮蓋を外し、歯垢染色液(歯垢を赤く染め出す染色液)でプラーク(歯垢)を染め出します。ラバーダム防湿を行い、口の中の湿度をコントロールした状態(口の中は湿度が70〜90%あると報告されています)でセラミックインレーを装着していきます。※部位や被せ物の形によってラバーダム防湿が適応でない場合はラバーダムを使わずに防湿をしっかり行った上で装着していきます。

クリーニング

接着阻害因子の入っていないペーストをつけてブラシで赤く染まったプラーク(歯垢)を徹底的に除去し、歯面を清掃していきます。

マイクロエッチャーで汚れ除去

マイクロエッチャー(粉を吹き出す機械)で削った目の中に入った汚れを除去していきます。汚れが残っているとその部分は接着していないことになるので、セラミック装着前の清掃がとても大事です。

エッチング(酸処理)

セラミックの適合(フィット)を確認した後、エナメル質だけをエッチング(酸処理)を行います。

エッチング(酸処理)すると接着に重要なエナメル質が白く白濁し、擦りガラス状になり、接着力が向上します。

セラミックインレー装着

プライミング(表面処理)、ボンディング(接着剤)を塗布後にレジンセメントで装着します。マイクロスコープの光でセメントが硬化しないように特殊なフィルムで光を変換しています。

オキシガード(重合促進)

オキシガード(酸素を遮断する薬剤)でレジンセメントの重合を促進させます。歯とセラミックが強固な接着で一体化することにより、セラミックの破折に対する強度が向上します。

残留セメントの除去

余剰セメントの取り残しがないか、拡大視野で確認し、残留セメントを除去していきます。フロスが通る歯と歯の間のフィット(適合)がとても大事です。段差なくセラミックが装着できていることがわかります。

治療終了

噛み合わせ調整を行い、虫歯治療が終了です。噛み合わせ、残留セメントのチェックで再度来院して頂く場合もあります。

奥歯のセラミックインレーの費用・リスク等

来院回数2回(虫歯治療、精密形成と型取り1回、セラミックインレー装着1回)

費用:セラミックインレー90,000円+税

治療のリスク・副作用等

一時的に咬合時に痛むことがあります。(一時的な症状で、数日で改善することがほとんどです)

将来的にセラミックが破折する可能性があります。(歯が破折しなければ再度セラミックを詰め直すことが可能です)メインテナンスを継続した上で、最低5年、できれば10年間はトラブルなく使用できることを目指しています。

マイクロスコープを使用した奥歯の虫歯治療

友和デンタルクリニックでは、このように奥歯の虫歯治療が可能です。

マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)や高倍率の拡大鏡を使用すると健康な奥歯の切削を最小限にでき、神経を温存できる可能性が高まることがメリットです。

通院回数は奥歯の虫歯の大きさによりますが、一つの奥歯の虫歯に対して少なくても1~3回の施術が必要となります。

※マイクロスコープ、ラバーダム防湿で行う虫歯治療は自費治療です

※虫歯が大きすぎる場合や痛みが強く虫歯がすでに歯の神経まで進行している場合には、歯の神経を抜く治療(抜髄)や歯の神経を一部除去する治療(神経温存療法)が必要になることがあります

※奥歯の隣接面の虫歯治療では、最終的に型取りをしてお口の外で作ったセラミックの詰め物を装着する場合があります

虫歯は自然には治らない病気です。

奥歯が虫歯になっていると美味しく食事をすることもできません。そのまま放置すると何もしなくても痛みが出たり、発見が遅れてしまうと歯の神経を抜く治療(抜髄)や最悪の場合には歯を抜く治療(抜歯)が必要になってしまうかもしれません。歯を長持ちさせるには早期発見、早期治療がお勧めです。奥歯の虫歯で悩まれてる方は、まず歯科医院を受診して虫歯の検査をしてみてはいかがでしょうか。

当院では安心・安全な治療を行うために治療を行う全ての歯科医師、歯科衛生士が高倍率の拡大鏡(歯科用ルーペ)をつけて診療しています。

当院は完全予約制です。

予約や相談をご希望の方はお気軽にお問合せください。

奥歯の虫歯治療が適応でない方

・奥歯の虫歯が大きすぎて歯がほとんど残っていない方

・奥歯の中でも親知らずが虫歯になっており、精密な虫歯治療が難しい方

・何もしなくてもズキズキと痛みが出ていて、歯の神経の治療が必要な方

・すでに歯の神経がなく、再根管治療(歯の根の再治療)が必要な方

上記のような症状がある方は神経を抜く処置や歯を抜く処置が必要になる可能性があります。